研究内容

(1)生体材料

 

 生体材料の代表例であるタンパク質は、分子量が何万~何十万といった巨大な物質で、大きさも数ナノメートルから中には10ナノメートルを超えるものもあります。
 そのような物体をつくるのに、化学反応を利用する、あるいは、大きなものから削り出してつくる、といった方法を用いると、個々の粒子のサイズや形にばらつきが生じます。研究で用いるタンパク質分子は、大腸菌の中で酵素分子がアミノ酸分子を一つずつつなげる反応によって作られます。DNAの配列に従って作られるので、極めて精密な化学合成です。したがって、全く同じ形・大きさの分子が生産されることになります。そんな分子のうちでも、フェリチンは金属ナノ粒子を内部に含むとても面白いタンパク質分子です。これを使ったナノスケールの電子デバイスも作製可能です。
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(2)磁気科学


 鉄が磁石に引き付けられるのはよく知られています。でも、物体が磁石に反発する*1のを見たことがある人はほとんどいないでしょう。

 実は、 身の回りの多くのもの、例えば、銅、ガラス、水、油、プラスチック、木、などは磁石に反発します。そのような物の性質を反磁性といいます。しかし、反磁性物質が磁石に反発する力は極めて小さいので、通常、見ることは出来ません。磁気科学は「磁気アルキメデスの原理」を利用してそのような小さな力を目に見えるようにします。そして、水を浮かせたり、物を瞬時に分離したりできます。もっと見る…

 


(*1磁石の同じ極(NまたはS)同士を近づけると反発しますが、向きを固定しておかない限り、クルッと反転してお互いに引っついてしまいますので、これは真の意味での反発ではありません。反磁性物質は、どんな向き の磁石を使っても反発します。)

 

(3)MOF

     

 MOFとはMetal Organic Frameworkの頭文字をとったもので、近年盛んに研究されている物質の総称です。
多孔性且つ結晶性の高い有機金属配位化合物で、この物質の構造からすぐに想像できる応用技術は、物質を貯蔵する、物質を分離する、
微細な反応容器として用いる、といったところでしょう。実際に、極めて多くの論文が報告されており、現在、化学の中でも最も研究が盛んな分野と言ってよいでしょう。わたしたちは、MOFを全く違う観点からとらえ、新しい応用例を発見しました。それがMOF-ペプチド化学モーターです。一旦MOFの中に入れた物質を外に出したときに面白いことが起こります。もっと見る…

 

 

 

(4)液体界面

 

 液体界面(気液界面や液液界面)の表面張力は、吸着した分子の数によって変化します。つまり表面張力を観測すれば、界面に存在する分子の量がわかります。私たちは、レーザーを用いて、液体界面で分子が吸着(または脱離)していく様子を観測し、ナノ構造が形成されていく様子や、界面での化学反応を解明するのを目的として研究を行っています。もっと見る…